先日、相続税の申告書を1件提出しました。
相続人は配偶者と子供2人でした。
かなりの財産があったのですが、被相続人はそういうことが
嫌いな方だったので遺言書もなく、また、生前に何の話もさ
れていませんでした。
配偶者の方はかなり高齢でしたので、2人の子供が主になっ
て何度も分割について話し合いがもたれました。
A不動産、B不動産、a預金、 b預金・・・
分割はなかなかまとまらず、結局申告期限ぎりぎりになって
ようやく完了しました。
被相続人の父親が遺言書を残しておいてくれたら、話し合い
はもっとスムーズに運んだのではないかと思いました。
ところで、もし仮に遺言書があったとしたら、必ずその遺
言書通りの分割にしなければならないのでしょうか。
遺言書と異なる分割をすると税金の問題が起こるのでしょうか。
たとえば、被相続人が全財産を兄に与える旨の公正証書遺
言を残していたとします。
しかし、相続人全員の同意のもとに、その遺言書の内容と異
なる分割協議を行い、結果として、兄と弟が1/2ずつ取得す
ることになりました。
そうなると、兄から弟への贈与になるのでしょうか・・?
このような場合は、受遺者である兄が遺贈を放棄し、その結
果、共同相続人間で遺産分割が行われたと考えられます。
ですので、遺言書通りに兄が全財産を取得していないという
ことだけで、兄から弟へ贈与があったものとして課税される
ことはありません。
遺言書通りにしないこともあるとは言いましても、やはり、
遺言書は被相続人の「思い」を相続人に伝える有効な手段です。
遺言書と異なる分割をする場合でも、被相続人の「思い」は分
割の指針となることでしょう。
税理士 大串 恵子